コンクリートマイクと壁
コンクリートマイクに付いての質問を色々受けるのだが、中でも苦慮するのが「壁」と言うイメージだ。
質問者の壁のイメージは「壁」と言う画一的なイメージしか持っていない。
「ホテルでの会話を盗み聞くのに探偵社がコンクリートマイクを使用した」
と言う様な記述を見ると、自分の家も聞かれてしまうのでは?と不安を抱いてしまう。
しかしホテルで使えたとしても、マンションで使える訳でもない。
一言で「壁」と言っても一様ではないのだ。
例えば、マンションの隣戸との壁は厚さ15センチ程の鉄筋コンクリートで作られている。
最初は隣戸との壁以外何も無い。
ここに軽量材やプラスターボードで戸内の部屋を仕切って行く。
軽量材で骨組みを作り、そこにプラスターボードを貼り付けていく。
※金属製の骨組みが軽量材、軽量財の中に入れてあるのがグラスウール、壁として貼り付けてあるのがプラスターボード。(天井も軽量材で組まれている)
ビジネスホテルなどは、隣室との壁はコンクリートではなく、この軽量材とプラスターボードで仕切られていたりする。
つまり、マンションの隣戸と、ビジネスホテルなどの部屋の壁とは素材も作りも違う。
このプラスターボードも1枚貼りと2枚貼りがある。
グラスウールは断熱・防音の為に入れられているが、直接聞えてくる音を軽減するだけで、コンクリートマイクに対する防音効果は無い。
ここがややこやしい所だ。
音とは空気の振動であり、空気の振動はグラスウールで軽減される。
しかし、コンクリートマイクは床や壁の振動を読取る装置。
上記の写真を見ると分かると思うが、プラスターボードは軽量材に直接貼り付けられている。
つまり、プラスターボードから軽量材へ直接振動が伝わり、その軽量材から反対側のプラスターボードに直接振動が伝わる。
素材的にも軽量財は空洞の金属製で音を伝えやすい。
10ミリ程度のプラスターボードと中空の金属製の角パイプなので会話も音として伝わり易い。
それ故ビジネスホテルではコンクリートマイクが使える。
マンションの場合は隣戸との間は15センチのコンクリートで、音としての振動を伝え難い。
マンションの場合、戸内の部屋はプラスターボードが使われているが、軽量材ではなく木材で骨が組まれグラスウールは入っていない。
上下の階の音の伝わりも異なる。
通常、コンクリートマイクで上下の階の声を聞くことは出来ない。
その理由は、コンクリートの厚みと天井にある。
写真の様に、上階のスラブコンクリートの下に軽量剤が組まれ、その下にボードが張られる。
マンション等では、軽量材ではなく木材で組まれている場合が多い。
天井の上(床)に厚さ30センチのコンクリートスラブがある。(スラブとは床構造と言う意味)
※強度的標準は古いマンションで15センチ、最近は20センチ前後、それ以上の厚みは防音目的)
さらに、このコンクリートスラブの上に床が造られる。
しかし、上下の階の声や音が聞える場合がある。
写真には縦に二本のパイプが通っている。
上下の階の声や音が聞える場合、主にパイプスペースが原因である。
ここはキッチンになる予定の場所だ。
このパイプが、プラスターボードで囲われて隠される為、音を伝えやすい構造になっている。
戸内のパイプスペースはキッチンとバストイレ部分にある。
因みに、水道管は音を伝え難いが、配水管は音を伝え易い。
理由は、水道管は水が詰まっているが、配水管は空洞になっている。
その為、配水管は伝声管の役割を果たして音を伝えてしまうのだが、伝え易い物と伝え難い物がある。
例えば浴室の配水管は、排水口の下から横にパイプが伸びて、上下の配水管に直接繋がっているので、音を遮る物が無く音を伝え易いが、トイレには水が溜まっているので水で音が遮られるので音を伝え難い。
洗面台やキッチンは、配管の途中にS字管が使われている物はそこに水が溜まっているので伝え難く、直管が使われている物は伝え易い。
マンションに於ける縦の配水管は、最上階から最下層まで通しで繋がっており、各階の排水管は床の下の横配管で縦配管に繋がっている。
上の写真で床部分に段差が付いているが、これをスラブ段差と言い、床下配管(横配管)をする為に段差が作られている。
上の階から見ると、この部分だけ床が薄いように思うかもしれないが、下の階ではスラブ段差の分だけ天井が下がる形になり、厚みは変わらない。
このスラブ段差のある場所も、床のパイプスペースとなっている。
こうしたパイプスペースでは、コンクリートマイクで「会話」の声を拾いやすい。
その為、「どれほど聞えるのだろう?」とコンクリートマイクを購入した人は、構造の事を知らずに使う為、「聞える」と勘違いしてしまう。
パイプスペースと同じ様に音を伝え易い場所が、換気扇の排気ダクトである。
この写真で天井に銀色の太いダクト管が映っているが、これが排気ダクトである。
この排気ダクトは天井を通ってベランダもしくは廊下で排気する。
稀に屋上排気しているマンションもあるが、それはパイプスペースと同じ様な構造になっている。
「どれほど聞えるのだろう?」とコンクリートマイクを購入した人が、天井でコンクリートマイクを使うと、自分の居る部屋の音とは異なる音が聞え、上の階の音と思ってしまう人もいる。
しかし、それは排気ダクトから伝わる自分のキッチンから伝わって来る音である。
この現象で面白いと言ったら失礼なのだが、勘違い妄想も起きている。
上の階からのコンクリートマイクによる盗聴を疑った人が、自室で天井にコンクリートマイクを当てて聞いてみた。
すると、TVの音声が聞えた。
それを、上の階の音声と思い込んでしまった。
しかしそれは、自宅のLDKで付けっ放しにしているTVの音声。
思い込んでしまうと、それが自宅の音声と気付けなくなってしまう。
こうなると、その人の頭の中では「チャンネルを変えると相手もチャンネルを変える」と言う事になってしまう。
この人のマンションは3LDKで、LDKはベランダ側、この人の部屋は廊下側、その間には押入れがあり、LDKの音は直接聞えない。
しかし天井の中には排気ダクトが・・・
因みに公営住宅では、床スラブに直接ペンキを塗って天井にしている所もある。
そうした所は、天井が低い作りになっている場合が多い。
スラブをそのまま天井にして、天井を下げれば建築コストを下げられ、低くした分階層を上げれば収益性を上げられるからだ。
そうした収益性を重視した建物では、スラブの厚みは薄く上の階の足音や家具を動かす音などが伝わり易く、音のご近所トラブルが起こり易い。
まあ、何にせよ「壁」や「床」は一様では無いのだ。
質問者の壁のイメージは「壁」と言う画一的なイメージしか持っていない。
「ホテルでの会話を盗み聞くのに探偵社がコンクリートマイクを使用した」
と言う様な記述を見ると、自分の家も聞かれてしまうのでは?と不安を抱いてしまう。
しかしホテルで使えたとしても、マンションで使える訳でもない。
一言で「壁」と言っても一様ではないのだ。
例えば、マンションの隣戸との壁は厚さ15センチ程の鉄筋コンクリートで作られている。
最初は隣戸との壁以外何も無い。
ここに軽量材やプラスターボードで戸内の部屋を仕切って行く。
軽量材で骨組みを作り、そこにプラスターボードを貼り付けていく。
※金属製の骨組みが軽量材、軽量財の中に入れてあるのがグラスウール、壁として貼り付けてあるのがプラスターボード。(天井も軽量材で組まれている)
ビジネスホテルなどは、隣室との壁はコンクリートではなく、この軽量材とプラスターボードで仕切られていたりする。
つまり、マンションの隣戸と、ビジネスホテルなどの部屋の壁とは素材も作りも違う。
このプラスターボードも1枚貼りと2枚貼りがある。
グラスウールは断熱・防音の為に入れられているが、直接聞えてくる音を軽減するだけで、コンクリートマイクに対する防音効果は無い。
ここがややこやしい所だ。
音とは空気の振動であり、空気の振動はグラスウールで軽減される。
しかし、コンクリートマイクは床や壁の振動を読取る装置。
上記の写真を見ると分かると思うが、プラスターボードは軽量材に直接貼り付けられている。
つまり、プラスターボードから軽量材へ直接振動が伝わり、その軽量材から反対側のプラスターボードに直接振動が伝わる。
素材的にも軽量財は空洞の金属製で音を伝えやすい。
10ミリ程度のプラスターボードと中空の金属製の角パイプなので会話も音として伝わり易い。
それ故ビジネスホテルではコンクリートマイクが使える。
マンションの場合は隣戸との間は15センチのコンクリートで、音としての振動を伝え難い。
マンションの場合、戸内の部屋はプラスターボードが使われているが、軽量材ではなく木材で骨が組まれグラスウールは入っていない。
上下の階の音の伝わりも異なる。
通常、コンクリートマイクで上下の階の声を聞くことは出来ない。
その理由は、コンクリートの厚みと天井にある。
写真の様に、上階のスラブコンクリートの下に軽量剤が組まれ、その下にボードが張られる。
マンション等では、軽量材ではなく木材で組まれている場合が多い。
天井の上(床)に厚さ30センチのコンクリートスラブがある。(スラブとは床構造と言う意味)
※強度的標準は古いマンションで15センチ、最近は20センチ前後、それ以上の厚みは防音目的)
さらに、このコンクリートスラブの上に床が造られる。
しかし、上下の階の声や音が聞える場合がある。
写真には縦に二本のパイプが通っている。
上下の階の声や音が聞える場合、主にパイプスペースが原因である。
ここはキッチンになる予定の場所だ。
このパイプが、プラスターボードで囲われて隠される為、音を伝えやすい構造になっている。
戸内のパイプスペースはキッチンとバストイレ部分にある。
因みに、水道管は音を伝え難いが、配水管は音を伝え易い。
理由は、水道管は水が詰まっているが、配水管は空洞になっている。
その為、配水管は伝声管の役割を果たして音を伝えてしまうのだが、伝え易い物と伝え難い物がある。
例えば浴室の配水管は、排水口の下から横にパイプが伸びて、上下の配水管に直接繋がっているので、音を遮る物が無く音を伝え易いが、トイレには水が溜まっているので水で音が遮られるので音を伝え難い。
洗面台やキッチンは、配管の途中にS字管が使われている物はそこに水が溜まっているので伝え難く、直管が使われている物は伝え易い。
マンションに於ける縦の配水管は、最上階から最下層まで通しで繋がっており、各階の排水管は床の下の横配管で縦配管に繋がっている。
上の写真で床部分に段差が付いているが、これをスラブ段差と言い、床下配管(横配管)をする為に段差が作られている。
上の階から見ると、この部分だけ床が薄いように思うかもしれないが、下の階ではスラブ段差の分だけ天井が下がる形になり、厚みは変わらない。
このスラブ段差のある場所も、床のパイプスペースとなっている。
こうしたパイプスペースでは、コンクリートマイクで「会話」の声を拾いやすい。
その為、「どれほど聞えるのだろう?」とコンクリートマイクを購入した人は、構造の事を知らずに使う為、「聞える」と勘違いしてしまう。
パイプスペースと同じ様に音を伝え易い場所が、換気扇の排気ダクトである。
この写真で天井に銀色の太いダクト管が映っているが、これが排気ダクトである。
この排気ダクトは天井を通ってベランダもしくは廊下で排気する。
稀に屋上排気しているマンションもあるが、それはパイプスペースと同じ様な構造になっている。
「どれほど聞えるのだろう?」とコンクリートマイクを購入した人が、天井でコンクリートマイクを使うと、自分の居る部屋の音とは異なる音が聞え、上の階の音と思ってしまう人もいる。
しかし、それは排気ダクトから伝わる自分のキッチンから伝わって来る音である。
この現象で面白いと言ったら失礼なのだが、勘違い妄想も起きている。
上の階からのコンクリートマイクによる盗聴を疑った人が、自室で天井にコンクリートマイクを当てて聞いてみた。
すると、TVの音声が聞えた。
それを、上の階の音声と思い込んでしまった。
しかしそれは、自宅のLDKで付けっ放しにしているTVの音声。
思い込んでしまうと、それが自宅の音声と気付けなくなってしまう。
こうなると、その人の頭の中では「チャンネルを変えると相手もチャンネルを変える」と言う事になってしまう。
この人のマンションは3LDKで、LDKはベランダ側、この人の部屋は廊下側、その間には押入れがあり、LDKの音は直接聞えない。
しかし天井の中には排気ダクトが・・・
因みに公営住宅では、床スラブに直接ペンキを塗って天井にしている所もある。
そうした所は、天井が低い作りになっている場合が多い。
スラブをそのまま天井にして、天井を下げれば建築コストを下げられ、低くした分階層を上げれば収益性を上げられるからだ。
そうした収益性を重視した建物では、スラブの厚みは薄く上の階の足音や家具を動かす音などが伝わり易く、音のご近所トラブルが起こり易い。
まあ、何にせよ「壁」や「床」は一様では無いのだ。
この記事へのコメント